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最高裁判所第二小法廷 昭和53年(行ツ)47号 判決 1979年4月13日

主文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人大原篤、同中嶋邦明、同大原健司、同瀬戸則夫の上告理由第二点について

原判決は、登録第八四二一四九号実用新案(以下「本件実用新案」という。)における実用新案登録出願の願書に添附した明細書の実用新案登録請求の範囲の記載が「断面コ字形の樋状金具本体の中間片に止螺子の挿通孔を長手方向に沿つて開孔するとともに、この中間片の両端を延長して下側にL状に屈曲し、計器函の正面に設けた案内条溝に係合する係止脚を形成した計器函における計器取付金具。」であること等を基礎として、本件実用新案の登録を無効とした特許庁昭和四三年審判第七〇二七号事件審決を正当としてその取消を求める上告人の請求を棄却したものであることは、原判文に微し明らかである。

ところで、上告代理人提出の特許庁昭和四九年審判第四三四六号事件審決謄本及び本件記録によれば、本件実用新案については上告人の訂正審判請求に基づき原審口頭弁論終結後の昭和五二年一二月一七日前記明細書における実用新案登録請求の範囲の記載中「両端を延長して」とある部分を「両側端縁部を切出して」と訂正すること等を認める旨の審決がなされ、上記審決謄本が昭和五三年二月二三日上告人に送達されたことが認められる。

そうすると、原判決の基礎となつた行政処分は後の行政処分により変更されたものであるから、原判決には民訴法四二〇条一項八号所定の事由が存するといわなければならないが、このような場合には、原判決につき判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違背があつたものとしてこれを破棄し、更に審理を尽くさせるため事件を原審に差し戻すのが相当である。

よつて、前記上告代理人のその余の上告理由及び上告代理人小松正次郎の上告理由についての判断を省略し、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判官 栗本一夫 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 本林 讓)

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